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僕は1人、残暑の夜を散歩していた。
散歩道は毎日通勤に使う住宅街を通り、静かな農道を一回りして自宅に帰る。30分くらいの道のりである。
ふと、今日はいつもと違う違和感を感じていた。
何というか、夜なのにも関わらず人の声や若者向けの音楽が聞こえる。
このときは、どこかで誰かが騒いでいるだけだと思っていた。
声が響くなか、もう一つの違和感を感じた。
カラン、コロン、カラン、コロン…
自分の歩く早さに合わすように追ってくる。
小走りをしても、止まってみても合ってくる。
不気味に思い、急いで住宅街を抜けた。
農道に入り、足を止め音を確かめた。
足音は消えている。しかし、一番最初に聴いた音が今も変わらず聞こえてくる。
足音の謎も残る中、今日の夜は何かがおかしい。
周りになにも無い農道で若者たちの姿も、たむろっている姿も見えないのに先ほどと同じ音量で声が聞こえる。
僕は怖くなり急いで家に向かった。
家に着くなりすぐ鍵をかけ、靴を脱ぎ、イヤホンを外し、電気を付けたまま布団をかぶった。
恐怖心に刈られる中眠れる事はなく、少したった後布団を抜け出し机についた。
水を一杯飲み、ホッとひといき落ち付きを取り戻しつつある。
だが次の瞬間まだ音が聞こえる事に気づく。
しかし今度は音も小さく部屋の中から聞こえる。